こんなふうにカラフルな家を見て思い浮かべたのは、アメリカのロックバンド、ザ・バンドのアルバム『ミュージック・フロム・ビッグ・ピンク』だ。タイトルにある「ビッグ・ピンク」というのは、ザ・バンドと、ボブ・ディラン（このアルバムにも参加している）が借りていた、文字通り側壁がピンク色に塗装されている家のことを指している。私が20代前半まで住んでいた実家の斜め向かいの家が、ある日突然外壁をピンクに塗り替えたことがあって、それを見て私は、ザ・バンドみたいだな、と思ったのを覚えている。さて、前述のアルバムの最後には、ボブ・ディランが書いた『アイ・シャル・ビー・リリースト』という曲が収録されている。この文章を書くにあたって聴き返してみたり、和訳を調べたみたりしたのだが、日本のフォークデュオ、ザ・ディランⅡによるオリジナルの日本詩でのカバーが良かった。『男らしいってわかるかい』という、一見尻込みしてしまいそうになるタイトルなのだが、歌詞にはこうある。「男らしいってわかるかい　ピエロや臆病者のことさ　（中略）　朝日はもうのぼるよ　すこしずつだけどね　その時その日こそ　自由になるんだ」。どのような意図をもって「男らしいってわかるかい」というフレーズが書かれたのかは分からないし、誤読、曲解かもしれないが、私はこの歌詞に、男でもウィークネスを持っていい、ということや、「男らしさ」からの解放（＝リリースト）、といったものを感じたのだ。